ほうっておくと怖い疲労
日本は"疲労大国"です。
日本人の5人中3人がなんらかの疲れに悩まされていると言われます。
生理的な疲れ
「今日は疲れちゃったな」
日常で当たり前のように使われる言葉ですが、具体的にどんな症状が疲れなのか、正確に把握している人は少ないかもしれません。
医学的には、一般健常者における疲れは
「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」
と定義されています。
いわゆる「生理的な疲れ」といわれるもので、仕事や家事、運動等で私たちが感じるものです。そのときかなり体や頭が疲れたと思っても、一晩寝て元気が出たり、週末のんびり過ごしたりすると回復します。
この生理的な疲れは3種類に分類することができます。
一つ目は、短期疲労。これはどんなに疲れたと感じても休む事で回復します。
二つ目は、中期疲労。短期疲労の回復期間にあるとき、さらに何らかの負荷が加わる事で、疲れが回復せず残ってしまい、疲労感も抜けきらない状態です。
そして三つ目は、前述した長期疲労。休めない状況が長期間続いた場合、疲れが回復する時間もありません。そのため、疲れはどんどん体に蓄積されていきます。
長期疲労を招いてしまう原因としては、過労のほか、睡眠不足やストレスも考えられますから、誰にでも長期疲労の状態に陥る危険性があります。
病的な疲れ
生理的な疲れ以外に、実はもうひとつ、別の疲れが存在します。
それは病的な疲れです。
疲れの原因となっている別の病気があったり、あるいは疲れそのものが病気であったりするものがこれにあたり、「慢性疲労症候群」や「特発性慢性疲労」と言われています。
こう言った病的な疲れは、長時間眠ったり、休日を何もせずに過ごしたりしても回復することはありません。体が明らかに疲れて調子が悪い状態がずっと続きます。
病的な疲れがもっともやっかいな点は、検査をしても大きな異常や疾患等が見当たらないことです。
本人は長期間の疲労状態で苦しんでいても、医学検査で何も見つからなければ、それは単なる思い込みと判断されてしまう場合があります。
「慢性疲労症候群」は明確な診断基準が定められた「病気」です。
「特発性慢性疲労」は、慢性疲労症候群とは診断できないが、慢性疲労の病態は認められ、今後、慢性疲労症候群に移行するかもしれない状態の事です。
長時間寝たり、1日なにもせずに過ごしたりしても疲労感が抜けなければ「病的な疲れ」のl可能性も…あまりに長期間疲れ続けているようなら、一度病院に行くべきです。
疲れが老化を促進する
疲れと老化は、メカニズムとしては同じです。
疲れも老化も活性酸素による細胞への攻撃により起こります。
活性酸素が一時的に細胞を傷つけるのが疲れ、そして細胞の傷が癒えないまま傷痕になるのが老化です。
体の疲れが抜けない状態で何日も過ごすと、細胞が修復しきれていないところにさらに負荷がかかり、傷痕も残りやすくなります。
つまり、疲れを放っておくということは、老化のペースを促進することにほかならないのです。
極端な事をいえば、その日の疲れをその日のうちにケアできれば、こまめに細胞が修復され、若さを保つアンチエイジングにつながります。
疲れで命をおとす可能性もある
疲れがたまっているのに、それを認識できない「疲労感なき疲労」というものがあります。
疲れがたまってくると、体から脳に「休め」という警告が発せられ、それを受けて、眠る休憩する、という疲労回復行動をとります。
ところが脳が興奮状態だったり幸福感のある状態だったりすると、体からの警告は無視されることがあり、疲れを疲労感として感じなくなってしまうのです。
この状況が長く続くと、その先に過労死や突然死が待っています。
例えば、残業明けの土曜日早朝のゴルフで心筋梗塞や脳卒中がよくみられます。これは疲労が蓄積した状態にも関わらずゴルフの楽しさや高揚感に脳がマスクされた「疲労感なき疲労」によって起こります。
こうした事例はとても多く、責任感があり、やりがいや使命感で働くような人ほど、「疲労感なき疲労」の状態が続きやすい傾向にあります。
疲れを侮ってはいけません。
出典:梶本修身 2013年.最新医学でスッキリ!「体の疲れ」が消える本 成美堂出版
出典:梶本修身
2013年.最新医学でスッキリ!「体の疲れ」が消える本
成美堂出版